奇跡の歌声 リナ・ヴァスタ 〜ヴェルディ 音楽家の家から生まれた感動!〜
本公演は2014年6月6日から2014年6月8日まで開催しました。
80歳を超えるソプラノ歌手リナ・ヴァスタ、奇跡の歌声 〜リナの魅力〜
ミラノ中心部、ブオナロッティ広場に面した「音楽家のための憩いの家」。イタリアが誇るオペラ作曲家ヴェルディが私財を投じて建てた、音楽家のための老人ホームだ。れんが造りの瀟洒な建物に、現役を引退した老音楽家たちが今も暮らす。
その「憩いの家」を代表するプリマドンナが、ソプラノ歌手のリナ・ヴァスタ。80歳を超えた今でも現役で、内外のコンサートで歌い、若い歌手たちを指導する。その凛とした、けれどチャーミングなたたずまいは、ほんとうに魅力的だ。初めて彼女の声を聴いてから13年が経つが、声も姿も、ますます若々しくなっている気がする。
「いつも、前を向いていること」
若さの秘訣を、リナはそう言う。「花や海や空を見て美しいと思うこと。すばらしいものを追うこと。そうしていれば、人は老いない」
リナの場合、当然のことながら、それに「声」を加えなければならない。弱音まで磨き抜かれ、まっすぐにこちらの心に飛び込んでくる、澄んだ、そして命の宿る声は、まさに奇跡だ。
生まれはシチリア島のカターニャ。大作曲家ベッリーニの故郷でもある古都だ。歌手志望だった母はベッリーニの名作《ノルマ》のアリアをいつも歌っていたという。早くから才能をあらわし、14歳の若さでミラノの音楽院に入学を許可され、16歳でデビュー。各地の歌劇場で歌い始めて成功を収めるが、結婚、出産を機に舞台から遠ざかる。指揮者の夫は、彼女の活躍を望まなかった。
「不幸だと思ったことはないの。音楽はいつも傍らにあったから。」
転機となったのは、夫婦で入居した「憩いの家」。教会でそしてコンサートで機会を与えられ、リナは再び歌い始めた。鳥が羽を伸ばすように、のびのびと。
プロの歌手として再び輝き始めたリナの活動は、ヴェルディ没後100年を記念して制作された、「憩いの家」を扱ったNHKスペシャル「人生を奏でる家」(2001年)でクローズアップされた。番組ではリナのレッスン風景も紹介され、それをきっかけに弟子もふえたという。リナが伝授するのは、「声を前に回す」今では失われてしまった貴重な技術。若い歌手たちが進歩する姿を見るのは、彼女にとっても大きな歓びだという。今回のリサイタルで共演する歌手も、リナの直弟子だ。2人とも、若手ながら日本オペラ界の第一線で活躍する期待の星。彼らとの共演は「とても楽しみ」だとリナは微笑む。
リナが披露するのは、「憩いの家」の創設者ヴェルディの代表作であるオペラ《椿姫》のアリアをはじめとするオペラのアリアや、珠玉のイタリア歌曲。《椿姫》の第3幕のアリア、「さようなら、過ぎた日よ」は彼女の十八番で、筆者も何度となく接してきたが、死を前にしたヒロインの悲しみを、格調高くけれどダイレクトに伝える歌いぶりと、技術的な安定度の高さ、そして澄んだ美しい声に、いつも魂を揺さぶられてしまう。知人を伴うこともよくあるが、誰もが心を掴まれ、言葉を奪われる。「初めがよかったの。いつまでもしっかり歌える基礎を叩き込まれた」と言うリナの歌には、「歌唱芸術」というにふさわしい品格がある。そして、歌うことへの限りない愛と情熱が。
年齢を超え、歌への愛と歌手としての誇りをこめて歌い続けるリナ・ヴァスタ。その奇跡の歌唱を、この機会にひとりでも多くの方に知っていただきたいと、心から願っている。
加藤浩子(音楽評論家)
【2014年2月に東京芸術劇場でリナ・ヴァスタと共演した青島広志氏からのコメント】
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Photo by Ayumu Gombl
私は、長く歌の伴奏もして来ましたが、とくに功なり名を遂げた往年の名歌手、それも女性歌手との共演は、まさに歴史とともに居ると実感出来て大変有意義でした。初めて外国人のプリマにオーケストラの伴奏で指揮させていただける機会を得ましたが、リナ・ヴァスタさんとのステージは、年齢の差も言葉の差も感じなかったのです。今回のリサイタルにはピアノ伴奏で出たい位ですが、おそらく長年の気の合ったパートナーが来るのでしょうね。残念・・・・。
青島広志(作曲家)
【リナ・ヴァスタと共演したテノール歌手、佐野成宏氏からのコメント】
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Photo:稲越功一
まず彼女の歌うヴィデオを見てびっくりした。声が全く揺れていない。フレッシュな、すがすがしい響きはとてもこれほどのご高齢とは信じられない。特にエンディングの、音が集約してピアニッシモに向かい、心の苦しさを吐露するかのようなアクートの部分での天使のような響き。
しかし一緒に舞台に立ってもっとびっくりした。同じトラビアータを会場の一番後ろまで明瞭な言葉、癖のないフレージング、完璧な息遣いでいとも簡単そうに歌いきるのである。そこには力みがなく、イタリアオペラ、殊にベルカントはこのように歌われなければいけないというお手本が存在していた。
日本語をネイティブ言語とするわれわれ日本人は、彼女の声の響きの位置を研究しなければならない。それは大きい声を出すことより大いに大切なことである。佐野成宏(テノール歌手)
今後のスケジュール
8/19〜8/24 長野県駒ケ根市制施行60周年記念
「第2回駒ケ根高原音楽祭 オペラマスタークラス」開催
主催:株式会社オペラ王国社
※詳細については公演の主催者におたずねください。
共演者からのメッセージ
【共演する上江隼人の語るリナ・ヴァスタ】
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Photo:Giacomo Orlando
「カヴァレリア・ルスティカーナ」2014年5月2日公演 ベッリーニ歌劇場(シチリア/カターニャ:Teatro Massimo Bellini)
ディミトラ・テオドッシュウ(Sop)、上江隼人(Br)彼女は、日々の生き方がそれはそれは徹底されています。
起床や睡眠、食事を細かく調整して、すべて大幅に崩すことはありません。決まった生活リズムと、感情を貯めずに発散させることが、若く居続ける秘訣だと本人は語ってくれます。本当に若い!
声については驚くしかありません。発声に全く衰えを感じさせないのです。
長く舞台に立ちオペラを演じてきた著名な歌手でも、通常は60歳後半くらいで声帯に歪みが出たり声を支えることができなくなります。しかし、リナさんの声は年齢を一切感じさせません。強靭な横隔膜によって均衡が保たれています。絹糸のようなピアニッシモがクレシェンドしていく様はまさに鳥肌が立ちます。
大切なのは、リナさんの音楽には魂が宿っているということ。
それこそが聴くものを虜にするのです。わたし自身も舞台に上がっていますが、迷った時には、彼女の紡ぐ音楽を思い出すようにしています。彼女が教えてくれた『自然に表現する』ということの中に、道標があります。
6月の来日公演で、リナさんと同じ舞台に立つことができて本当に幸せです。☆上江隼人の最新情報
イタリアの歌劇場で世界的ソプラノのテオドッシュウと共演!
「カヴァレリア・ルスティカーナ/アルフィオ役」「道化師/トニオ役」で出演
http://www.teatromassimobellini.it/dettopera.asp?id=634
【共演する笛田博昭の語るリナ・ヴァスタ】
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©藤原歌劇団
Q:リナさんと出会ったのはいつ頃ですか?
A:マエストラに出会ったのは2007年の夏です。Q:きっかけは・・・。
A:旅先のミラノで友人のレッスンに赴きそこで教えていたのがリナ先生だったのです。Q:その時のリナさんの印象は・・・。
A:いやはや一声を聴いただけで度肝を抜かれましたね。
もの凄い声量とは言えないものの、純度が高く無駄のない響きが部屋中に行き渡るのです。
80歳近い女性が歌っているとは到底思いませんでした。
これこそ天に届くホンモノのイタリアなのだと確信して先生に教わることを決めたのです。Q:リナさんに対する思いは・・・。
A:リナ先生にはこれからも素晴らしい声と音楽をたくさん届けて欲しいと思っています。Q:今回の公演について・・・。
A:マエストラの歌を生で聴くとわかるのですが人生観が変わりますよ。みなさん是非試してみてください。
【共演するピアニストのヴィンチェンツォより】
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Q:日本には何度目の来日になりますか?
A:2011年11月が初来日で2回目の来日になります。
Q:日本の印象は・・・?
A:日本は大好きです。西洋にはない凛とした精神を感じます。
Q:今回の来日に際して・・・。
A:今回の来日も非常に楽しみにしています。
母と共に共演し、日本の皆さまにイタリアの芸術を紹介できることは、何よりの喜びです。
予定プログラム
ヴェルディ | 「椿姫」より | (リナ)(上江)(笛田) |
ヴェルディ | 「運命の力」より | (リナ)(笛田) |
プッチーニ | 「修道女アンジェリカ」より | (リナ) |
ヴェルディ | 「トロヴァトーレ」より | (上江) |
ヴェルディ | 「ドン・カルロ」より | (笛田&上江) |
イタリア歌曲集より | (上江)(笛田) | |
ナポリ民謡 | 君を愛す(リナ)、カタリー(上江)、禁じられた音楽(笛田) |
出演予定
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リナ・ヴァスタ(ソプラノ)LINA VASTA
ミラノのコンセヴァトーリオ(ヴェルディ音楽院)でディプロマを取得。ジャンニーナ・ロンバルディ氏、イネス・フェラーリス氏に師事。16歳で歌手活動を始め、オペラ『椿姫』『ルチア』『リゴレット』などの舞台に立つ。イタリア国内の市立劇場にてリリコ・レッジェーロ・ソプラノとして活躍。第二次世界大戦中も戦火を縫いながら歌い続けるが、後に、34歳年上の指揮者パスクァリエッロ氏と知り合い結婚。夫の希望により若くして歌手活動を引退することになる。
1984年に夫と共にヴェルディ「憩いの家(養老院)」に移り住む。音楽活動やコンサートのできる環境が、リナの眠っていた歌への熱情と才能を覚醒させる。周囲は、彼女の類まれな音楽性とそれを支えるテクニックに驚いた。聴衆の歓喜と彼女の活動を支える人々と出会い、再び人前で歌い始める。現在ミラノの「憩いの家」に在住し、イタリア国内を始め海外で音楽活動を行いながら、後進の指導にもあたる。 -
上江隼人(バリトン)HAYATO KAMIE
東京藝術大学及び同大学院を首席で卒業。奨学生としてイタリアへ留学。2011年パルマ王立歌劇場主催ヴェルディ・フェスティバルに出演。2012年二期会『ナブッコ』タイトルロール、神奈川県民ホール/びわ湖ホール共同制作オペラ『椿姫』ジェルモンなどで絶賛を浴びる。ディマーロ(トレンティーノ)国際コンクール優勝。五島記念文化賞受賞。これまで『トロヴァトーレ』『シモン・ボッカネグラ』『リゴレット』『ファルスタッフ』『パリアッチ』『スティフェーリオ』ほかに出演。パルマ王立歌劇場やシチリアのベッリーニ歌劇場にも出演するなど、目覚ましい活躍を見せる期待のバリトン。'14年二期会『ドン・カルロ』ロドリーゴ役で好評を博した。
今後のスケジュール
7/31「上江隼人バリトン リサイタル」
会場:紀尾井ホール
主催:五島記念文化財団
※詳細については二期会におたずねください。 -
笛田博昭(テノール)HIROAKI FUEDA
名古屋芸術大学音楽学部声楽科を首席卒業及び同大学院修了。2003年『トゥーランドット』(カラフ)でデビュー。ミラノへ留学し研鑽を積む。イタリアのフェッラーラ歌劇場『イル・トロヴァトーレ』(マンリーコ)ほかイタリア各地、ヴァチカン国際音楽祭や上海国際芸術祭『蝶々夫人』(ピンカートン)に出演するなど海外でも活躍。藤原歌劇団『仮面舞踏会』『ラ・ボエーム』ほか、K-BALLET『第九』、西本智実プロデュースオペラ『蝶々夫人』など数多くの作品に出演。2006年イタリア声楽コンコルソでイタリア大使賞受賞。2007年第9回マダム・バタフライ世界コンクール(モルドヴァ)第1位。2008年愛知県芸術文化選奨「文化新人賞」、2009年五島記念文化賞オペラ新人賞受賞。
今後のスケジュール
6/28 藤原歌劇団創立80周年記念オペラ「蝶々夫人」
会場:新国立劇場オペラパレス
主催:(公財)日本オペラ振興会
※詳細については公演の主催者におたずねください。 -
ヴィンチェンツォ・パスクァリエッロ
(ピアノ伴奏)Vincenzo Pasquariello仮ピアニスト、作曲家、俳優。ミラノ出身 音楽家の家系に生まれ、祖父ジェンナ一口は有名なナポリ民謡歌手。4歳より指揮者の父からピアノの手ほどきを受け、その後、ブルーノ・カニーノ 氏のもとで学び、ジュゼッペ・ヴェルディ・ミラノ音楽院を卒業する。イタリア国内(ミラノ・スカラ座を含む)、また海外において、ソロ演奏、室内 楽演奏をし、自作の曲も発表する。スイス、ケルンのラジオ番組に出演多数。 オスカー・シュレンマ一による「BauhaousTanze」をウィーン、ハノーバーなどの美術館で演奏。ミラノ、王宮美術館でパフォーマンスコンサート に出演。ベルリン、ワシントンなどのコンサートに出演。
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深野弘子(司会)HIROKO FUKANO
フリーアナウンサーとして、テレビ朝日「オリジナルコンサート」をはじめ、数々の番組の司会をつとめる。現在、鎌田弥恵に師事するけやき会のメンバーとして、毎年語りの公演に参加。また吉武輝子や竹下景子などと結成した「ななにんかい」朗読公演など、朗読や語りの場に活動を広げている。
【ミラノでリナ・ヴァスタの教えを受けた2人の歌手が出演!】
ヴェルディ「音楽家 憩いの家」とは…
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「憩いの家」は、昨年生誕200周年を迎えたイタリアの巨匠ヴェルディが私財を投じて設立した音楽家のための養老院。ヴェルディがオペラを超えた生涯最高の傑作と呼んだこの場所には生涯を音楽にささげた音楽家たちが集い、その希有な存在が戯曲「思い出のカルテット〜もう一度唄わせて〜」ほか、ダスティン・ホフマン初監督映画「カルテット」や名作「トスカの接吻」のモデルになるなどの注目を集め続けています。この「憩いの家」で唯一、現役ソプラノ歌手として活躍しているリナの生き生きとした姿とその透明感溢れる歌声は、国や世代を超えて数多くの人々の心を打ち感動を伝えてくれます。
公演日程
[ご注意とお願い]
- ●会場内における飲食、喫煙はご遠慮下さい。
- ●写真撮影、録画、録音等は一切禁止させて頂きます。
- ●未就学児童のご入場はご遠慮ください。
- ●開演後のご入場は制限させて頂く場合がございます。
- ●都合により曲目が変更する場合もございます。ご了承下さい。
6/8(日) 14:00開演 (13:30開場) |
会場 | 東京オペラシティ コンサートホール | 発売日4/11 |
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座種 | 5,800円 | ||
情報 |