数億円?の名器ストラディバリウスを差し上げます!?兄弟デュオによる、驚異のコンサート。弦楽器の演奏の極意を語る。【3月のおすすめ】

最高に楽しめる、躍動感あふれる魔法のようなコンサート!

2023年3月中旬に、ハンガリー出身の兄弟による楽しいコンサートが開催されます。ヴァイオリン奏者の兄シャンドルと、チェロ奏者の弟アダム、コンサートのプロデュースを担当した「ウィンナー・ワルツ・オーケストラ」名物指揮者クトゥレーロがピアノ伴奏で参加。驚異的な速弾きと、ロマ音楽(ジプシー音楽)の魅力をたっぷり堪能できるコンサート。来日公演の前に行ったインタビューで、時に楽しく、時に専門的に、兄弟の絆を感じさせる貴重なお話を語ってくれました。


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■世界をより良くする音楽 ~音楽は愛と平和の象徴、震災復興で「TSUNAMIヴァイオリン」を演奏~

.日本で何度も公演を行っていると思いますが、これまでに何度くらい来日していますか?
 兄シャンドル・ヤヴォルカイ:以下S) 日本へは、公演で何度も訪れています。50回くらいかもしれません。ヴァイオリンのマスタークラスで教えていたので、1年で5~6回来たこともあります。日本で演奏することを、いつもとても楽しみにしています。
 弟アダム・ヤヴォルカイ:以下A) 初来日から20年以上経ちます。私もチェロのマスタークラスを受け持っていて、ウィーンと旭川を何度も行き来しました。音楽の懸け橋ですね。日本の観客の皆さんは、世界でも素晴らしい観客だと思います。日本のコンサートホールで演奏しているとき、魔法のように神秘的なことが起こる事があります。ホールにいるすべての観客の方々が、まるで1つの魂になっているように感じる瞬間があります。とても美しい瞬間です。これは、日本でだけ感じることです。
.日本での公演を、特別に感じていますか?
 S)世界中のいろいろな国で演奏をしているのですが、日本をとても興味深く感じています。日本の観客の皆さんは、感受性が高く繊細なのだと思います。
 A)そうですね。他の国では、先ほど言ったような感覚を、それほど強く感じることがないので、やはり日本での演奏は特別に楽しみにしています。情感を込めて演奏すると、すべての観客の方々の魂がこちらを向いて、繋がっているように感じます。

―音楽は、国も人も繋げる愛と平和の象徴
.
これまでの日本公演で、印象に残っていることはありますか?
 A)日本では、数多くのチャリティ公演を行いました。熊本地震復興、東日本大震災復興などに関係した公演です。復興公演では、サントリーホールでも演奏しました。
 S)震災から3年経った2014年に、ヴァイオリン製作者の中澤宗幸氏が作った、通称「TSUNAMIヴァイオリン」を弾いたことがあります。ヴァイオリンの裏側に津波から唯一生き残った奇跡の一本松が描かれた、とても有名なヴァイオリンです。サントリーホールでこのヴァイオリンを弾きました。今、震災から10年以上経っても演奏リレーが続いているということです。
 A)震災後、皆がそれぞれにお互いを守り合い、音楽を通してより一層強く結ばれているようでした。今も世界は非常に混沌としていて決して良い時期ではありませんが、私達兄弟が一緒に皆さんを想って音楽を演奏すれば、国と国という垣根を越えて全ての人が繋がるのではないかと思っています。
音楽は、世界の良い面を見せるための最も大切な事のひとつで、愛と平和を与えてくれて、お互いをつなげることができるのだと思います。

 S)音楽は、誰にでも優しい心をもたらせます。すべてを音楽で繋げることも可能なのです
 A)どんな時も、音楽を演奏することが大切だと思っています。音楽は、世界をより良くする方法の最も大切なひとつです。

 S)私達がとても日本を好きな理由のひとつに、日本の人々の精神性があります。最初は少し控えめですが、何かのきっかけで心地良い感情が沸き出すと、皆が心を開いてくれるのです。
2000人でも3000人でも関係なく、観客が大きな1人となるのです、3000人が1人になるのです。すると大きな観客であるその1人が自分のために演奏されているように感じ、私達もその1人のために演奏する。私たちは音楽と一緒にみなさんに大きな愛を差し出し、観客の皆さんは心地良いエネルギーとしてそれを受け取ってくれるのです。
 S、A) それが、私たちが演奏をする理由です!

兄シャンドル
弟アダム

■世界の音楽祭で ~カザルスへの思い、驚きの方法で奇想曲を演奏~

.ヨーロッパで音楽祭にも多く出演されていますが、印象的だった音楽祭や出来事はありますか?
 S) 『アイザック・スターン・フェスティバル』が印象的でしたね。アダムは、『マールボロ音楽祭』と答えるのではないでしょうか?
 A)いや、なんと言ってもスペインの『カザルス音楽祭』ですよ。チェロの音楽祭。
パブロ・カザルス(世界で最も有名なチェロ奏者) はすべてのチェリストの父。私は、カザルスの演奏に心を打たれました。それで私はチェリストになったのです。素晴らしいことに、私の教授もカザルスと一緒に学んでいたんですよ。
今、私はパブロ・カザルスの所有していたチェロを弾いています。このチェロは、彼が持っていた最初のマッテオ・ゴフリラー(世界最高峰の弦楽器製作者による楽器)なんです。最高に美しい音色です。カザルスが作曲した「鳥の歌」は、日本でも有名ですよね。私もよくその曲を弾きます。彼はとてもヒューマニストで、戦争にも反対していました。

 S) 私は、たくさんの音楽祭で演奏しているので一番を選べませんが、ウィーンで開催された音楽祭も面白かったです。その音楽祭では、私が何を演奏するかを観客が選んだんです。アラカルトのような感じで。有名なオーストリアの俳優が司会をして、「さあ、今からヤヴォルカイ氏に、カプリース(パガニーニ作曲のヴァイオリン奇想曲)の1番から24番まで弾いていただきます。弾いてほしい番号を言ってください!」そう言って、彼はペンを持って客席に行き、戻ってボードに観客の選んだ例えば「2番」と書きます。そこで私が2番を演奏するのです。「では、どなたか次のリクエストはありますか?」「はい、10番ですね」と言ってまたボードに番号を書き、私が演奏する。
こんな事をやるのは、たぶん世界中で私だけ。舞台上では、誰もやらないと思いますよ。ヴァイオリンの曲の中で最も難しい曲を、ランダムに24曲全曲弾くんですから。

 S) それから、だいたいにおいてどこでもアダムとデュオで演奏しています。
ある新聞社の評論家で、厳しい辛口批評で知られて影響力のある方がいます。とても変わり者だと言われる人物で、誰が演奏してもダメ出しばかりなんです。その時は、私たちデュオでコダーイの曲を演奏していたのですが、コンサートの後に新聞に出た批評で彼が「アルバン・ベルク四重奏団以来の、最もエキサイティングなデュオ!」と書いてくれたんです。もちろんアルバン・ベルク四重奏団は最高に素晴らしいですよ。それに匹敵する素晴らしい室内楽を、私とアダムの演奏で聴いたと高い評価をいただいたんです。その事もきっかけで、ウィーンのアーティスト・オブ・ザ・イヤーを2回も受賞したんですよ。


■名器ストラディバリウスを越える音色とは?~演奏楽器について~

.楽器の話が出ましたが、演奏している楽器について教えて下さい。
 S) 今度来るときには、新しいヴァイオリンで来日する予定です。アントニオ・ストラディバリ(世界最高峰の弦楽器製作者、ヴァイオリン製作者の最高峰と言われる)のヴァイオリンです。以前は、グァルネリウス(ストラディバリと並ぶ世界最高峰の弦楽器製作者一家の楽器)に替えていたのですが、最近再びストラディバリウス(ストラディバリ家が制作した楽器名称)に替えました。
 A)私は、ストラディバリウスのチェロからゴフリラーに替えました。
 S) アダムも前はストラディバリウスを弾いていたんですけどね。
 A)今は、ゴフリラーの方が気に入っています。
堤剛氏(日本を代表するチェロ奏者)が師事していたヤーノシュ・シュタルケル(ハンガリー出身の世界的なチェロ奏者)をご存知ですか?堤氏はアメリカのインディアナ留学時代にシュタルケルのアシスタントをやっていたんですよ。シュタルケルはパブロ・カザルス以来の偉大なチェリスト。彼も、ストラディバリウスからゴフリラーに楽器を替えていました。

チェロを弾くアダム

.ストラディバリウスとゴフリラーの音色の違いについて教えて下さい。
 A) ストラディバリウスは、音が少しストレート。ゴフリラーについて、私の友人がこう言っています。『比較してゴフリラーの音色を聴くと、それは「金」。まるでホットチョコレートと性的陶酔感を混ぜ合わせたような音』だと(笑)
 S)それはいい!(爆笑)
 A)それが、ゴフリラーの音です。とても特別です。ストラディバリウスの音色は、とても貴族的です。とても美しくて気高い。
 S)私は、ストラディバリウスを使っています。弓はバルトーク(ハンガリー出身の作曲家)の弓なんですよ。バルトークが使っていた弓です。
 A)私のは、ダーヴィト・ポッパー(ハンガリー出身の世界的な名チェロ奏者)が使っていた弓です。ポッパーが使っていたチェロも持っていますが、今はゴフリラーを弾いています。 今、ゴフリラーが好きなのですが、例えば地球上でもっとも美しい音色を想像した時に、ゴフリラーの中にすべてが存在していると思います。とても丸みを帯びていてパワフルな音色。そして、深くエロティックで美しい。時にはヴァイオリンのようで、ある時はとても深い音色だったり、ある時はどんな音なのかどこで弾いているのかもわからない。言葉ではとても言い表せない、感じるしかないのです。だから、その音は最も優れていて全てを含んでいるように感じます。人生のすべてをも。

 A)もう一つ、カルカッシ(フィレンツェの優れた弦楽器製作者の楽器)も持っています。とてもパワフルで限りなく美しい音色です。
 S) 私もカルカッシを持っています。私たちは、ヴァイオリンのカルカッシとチェロのカルカッシを両方持っています。どちらも素晴らしい楽器です。
でも、たぶん私はもう少ししたら、アマティ(世界最高峰の弦楽器製作者の楽器。世界最高の3大ヴァイオリンは、ストラディバリウス、グァルネリウス、アマティと言われている)に変えると思います。年齢を重ねていくと、アマティがいい。今、アマティを探しているところです。アマティは、ストラディバリの師匠だった人です。音がとても優しいんです。より優しくて強すぎない。

ヴァイオリンを弾くシャンドル

■日本の観客へのメッセージ ~貴重な生演奏、美しいひと時を一緒に楽しみましょう!~

. 日本の観客のみなさんにメッセージをお願いします。
 A)日本のファンの皆さんに、来日コンサートでお会いしたいです!今の時期、生演奏のコンサートはとても貴重な機会だと思います。魔法のような、美しいひと時を一緒に楽しみましょう。人生の中で、最も美しい瞬間を共有することはとても大切です。そして、私たちのコンサートは最高の機会になるでしょう。是非、コンサートを聴きに来てください。私たちと一緒にお楽しみ下さい!
 S) 弟のアダムと同じですが、コンサートで演奏を聴く事はとても大切です。是非、私達と一緒に生演奏を楽しんでください。私たちは、きっと良い友人になれるでしょう。
 A) 私たちは、コンサートですべてを与えます!
 S) 私たちは、コンサートですべてを与えます!ストラディバリウスもあげます。ウソです。(笑)

※今回のインタビューではヤヴォルカイ兄弟に、演奏楽器の音色の違いや音楽に対する考えをお話しいただきました。次回インタビュー第2弾で、兄弟がヴァイオリンとチェロ奏者になった経緯や幼い頃からの家族の絆、コロナ禍の活動について聞いています。お楽しみに。

【インタビュー第2弾はコチラ】 
➡ 
https://www.koransha.com/contents/3322/
演奏してみた!わずか5歳で演奏家?!兄弟で音楽家を目指してデュオ結成。尊敬する父の愛情から学んだ音楽の本質。音楽の魔法をあなたに【3月の注目公演!】


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