プラハ国立歌劇場
美しく伝統が息づくプラハ国立歌劇場が、人気演目「トスカ」で来日。
甘美な旋律と名アリアに酔う、感動の舞台!
プラハはいまも芸術の香りただよう美しい都。街を歩けばアールヌーボー様式の優雅な建物が並び、ゆったり流れるモルダウ川のほとりに、かつての栄華をしのばせる王宮が建っています。そんなプラハの街の中心に建つのがロココ様式のファサードを持つ美しいプラハ国立歌劇場。現在は国際感覚にあふれた洗練された雰囲気が特徴で、何度かの来日で、日本でもすっかりおなじみの歌劇場です。
今回上演される「トスカ」は、世界の歌劇場で人気ベスト3に入るプッチーニの傑作。感動的な旋律に彩られた音楽はもちろんのこと、ヴィクトリアン・サルドゥの原作は、手に汗握るスリリングな舞台展開で、感動的な悲恋物語として知られます。サルドゥはこの戯曲を、名女優サラ・ベルナールのために書きましたが、その公演のポスターを描いたのが、チェコを代表する画家ミュシャでした。
舞台は1800年のローマ。いまも現存する教会やファルネーゼ宮殿やサンタンジェロ城が物語の舞台になっており、物語には実際の史実も織り込まれています。ローマ一の人気を誇る歌姫トスカは画家のカヴァラドッシと恋仲ですが、彼女に横恋慕する警視総監スカルピアの陰謀で、恋人は捕らえられて死を宣告されます。その命と引き替えに体を要求されたトスカは、迫ってきたスカルピアを、ナイフで刺し殺してしまうのです。
オペラのヒロイン、トスカは感情が激しくちょっと嫉妬深いかわいい女性。全身全霊で恋人のカヴァラドッシを愛し、遂にはその愛を貫くため城壁から身を投げてしまうのです。その「トスカ」には名アリアが多く、カヴァラドッシの「妙なる調和」や「星は光りぬ」は甘美な旋律が有名です。そして第2幕でトスカが悲痛な想いを込めて歌うのが名アリア、「歌に生き、恋に生き」です。
今回の来日公演で歌姫トスカを歌うのが、トスカ歌手として世界的に知られる名ソプラノ、エヴァ・マルトンとノルマ・ファンティーニ。マルトンはドミンゴやカレーラスなどとたびたび共演した強い表現力と豊かな声量を持つハンガリーの名ソプラノ。一方のファンティーニは、伝統のベルカント唱法を受け継ぐイタリアを代表する名ソプラノ。そのなめらかな美しい声とドラマティックな表現力で日本にも多くのファンがいます。
プラハ国立歌劇場の「トスカ」は、伝統に沿ったオーソドックスな演出で、美しい舞台とカラフルな衣裳が前回の公演でも評判になりました。オペラは゛見てのお楽しみ゛。どうぞ、生の舞台で感動を味わってください。
石戸谷結子(音楽ジャーナリスト)