ウィンナー・ワルツとニューイヤー名曲セレクション サンクトペテルブルグ室内合奏団

新年の開幕を祝い、喜びに満ちた時間を迎える。
新年恒例、名アンサンブルによる充実と希望の一日。

 1861年2月、冬のウィーン。35歳のヨハンを筆頭に、ヨーゼフ、エドゥアルトのシュトラウス三兄弟が同じステージに立った。彼らの音楽生活の中で、初めてのことであった。すでに、父ヨハン1世はこの世になく、息子ヨハンは超売れっ子としてヨーロッパ中を飛び回り、弟たちも多忙を極めていたからだ。そう、ウィーンの街では、連日連夜、シュトラウス・ファミリーのワルツやポルカが流れ、何万という市民が踊りに明け暮れていたのだ。

 三兄弟そろっての初ステージから150年。2011年、新春の日本では、全国至る所でシュトラウス一家の作品を中心としたウィンナー・ワルツが演奏され、音楽とともにニューイヤーを迎えようという多くの人が酔いしれるだろう。これほどまでの現象を、シュトラウス三兄弟は、そして父ヨハンも、想像すらしなかったに違いない。

 サンクトペテルブルグ室内合奏団「ウィンナー・ワルツとニューイヤー名曲セレクション」も、例年、多くの人を酔わせ続けているお馴染みの新春公演だ。今回で8年連続の日本公演となり、人気のほどがうかがえる。

 この名アンサンブルが醸し出す音楽は、清純そのもの。流れてくる音は澄みわたり、まさに新春の透き通った空気のようだ。そして、一つひとつのフレーズを大切に演奏し、作品の輪郭がくっきりと浮かび上がってくる様は、実に心地よい。誠実・真摯な音楽づくりが、人々を惹きつけてやまないのだ。サンクトペテルブルグ音楽院(旧レニングラード音楽院)の出身者を中心に構成された彼らは、芸術都市サンクトペテルブルグ随一の実力をいかんなく発揮してくれる。

 シュトラウス・ファミリーの音楽は、新年を祝うために作曲されたものではないが、なぜか耳に届くのは、爽やかな「春の息吹」。本公演のメイン・プログラムをはじめとしたこれらの音楽ほど、「新年を寿ぐ」という美しい日本語にふさわしい曲目もないだろう。

 清らかで、美しく、喜びいっぱいの演奏は、2011年の幕開けにぴったりだ。